日本語表現の適切性について
要旨:日本語が設置されている中国のほとんどの大学において、四年次に学生には卒業論文が課せられている。日本語による論文執筆なので、多かれ少なかれ不自然な日本語表現が出てくるのは特に不思議ではない。ただ、四年次生の日本語レベルから考えると、卒業論文に基礎段階での誤用が多いのは重視されるべきことである。例えば「~たら」や「ちょっと」など会話に使われるべき表現、あるいは「~を育つ」のような文法的誤用などが、日本語専攻の学生たちの卒業論文にみられる。本稿は、具体的にどのような日本語表現に問題があるのか、また、なぜそのような表現が使われているかについて考察する。
キーワード:卒業論文;日本語表現の問題誤用;教育指導;中国語の転移
一、はじめに
作文の実践と指導は、日本語教育の重要な一環として、日本ではもちろん、中国の大学の日本語科でも重要視されている。これに伴い、学習者にどのように指導すれば流暢で自然な日本語の文章が書けるようになるかという研究や実践活動も続けられている(齋藤シゲミ2005、田中信之2005など)。そして、作文教育にみられる問題点は何であるか、どのように取り組めば問題改善ができるのかということも、内外ともに関心の高いテーマになる(熊燕2010、李農媚2012など)。
比較的活気にあふれた作文の教育と研究に比べ、学習者による卒業論文に関する研究は、どちらかといえば、まだかなり不足しているようである。日本でも中国でも、確かに卒業論文やレポートの書き方に関わる著書が多数出版されているが、そのほとんどが論文のテーマ選び、構成、文献の引用方法、書式体裁などに集中する(例えば、子康2008、父登・恰錐2007など)。日本語の表現など語学面での注意事項や問題点を取り扱うものは、筆者の知っている限りでは、浜田麻里ほか(1997)、二通信子・佐藤不二子(2003)以外にほとんどみられない。
文章構成や文献引用の方法などは、卒業論文の完成度を高めるためには必要不可欠な要素になるわけであるが、日本語の表現など言語運用の基礎部分が無視されてはならない。いくら構成が完壁であっても、あちこちに不自然な日本語が出てきては好論文だとはいえない。
日本にいる学習者たちは、日々日本語を使うため、卒業論文やレポートな
目次
要旨....................... .............................................. ..................1
キーワード............... .................................................................1
一、はじめに...................................................... .... ...................1
二、卒業論文に現れる不適切な文体的表現.... .... ..... ...............2
2.1「~から」の使用.............................................................2
2.2「~たら」の使用.............................................................3
2.3敬語の使用...................................................................4
2.4.文体的誤用の生起要因.................................................5
2.5中国語からの負の転移...................................................5
2.6教育指導の不足............................................................6
2.7日本語からの逆影響.....................................................6
2.8ロ語的表現.............................. ....................................6
三、終わりに........................................................ ........ .............8
参考文献.............................................................. .. ................8
参考文献
[1]干日平、黄文明.日培疑唯同題解析[M].北京:外悟教学与研究出版社.2004
[2]干康.日培拾文写作一方法与実践[M].北京:高等教育出版社.2008
[3]齋藤シゲミ.における、だから[J].北海道文教大学137-148.2005
[4]爽登・恰錐(著)、沈文欽・李菌(訳).大学生拾文写作指早手冊一[J]北京:教育科学出版社.2007
[5]森田良行.日本語の類義表現[M].東京:創拓社.1988
[6]二通信子・佐藤不二子.改定版留学生のための論理的な文章[M].東京:スリーエーネットワーク.2003
[7]浜田麻里・平尾得子・由井紀久子.大学生と留学生のための論文[M].東京:くろしお出版.1997